労務のレシピ

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人事労務関連のさまざまな知識や手続き方法を紹介しています。労務業務の最適化にもお役に立てればと。

気をつけて! 厚生年金保険料がアップするのは10月支払い給与から!(ほとんどの会社が)

この季節になると、こういう記事をよく見かけます。disるわけではありませんが、知識ある人や、しっかり最後まで読み進めないと勘違いしてしまうので、ちょっとなあ・・と毎年思っています。

勘違いしてしまいそうな記事

その1

bizer.jp

 

その2

wol.nikkeibp.co.jp

 

勘違いとは?

9月から年金保険料がアップすると思ってしまいませんか? 記事をしっかり最後まで読んでいけば10月から変更になる話が出てくるんですが、さらっと斜め読みしていると9月に変更されると思ってしまいます。

 

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厚生年金保険料の変更の実態

いつから厚生年金保険料がアップされるのか

ほとんどの人が「10月に受け取る給与から」です。(例外あり)

 

対象者は?

全員です。

 

なぜ変わるの?

2つの理由があります。

1つは厚生年金保険料率が変わるため。これは全員対象です。実は毎年ずーっとちょっとずーつ、ちょっとずーつ保険料率がジワジワアップされていました。来年のアップで一旦固定される予定となっています。

 

もう1つは保険料率を掛ける基となる金額(標準報酬月額)が変更される場合があります。定時決定といって、毎年1回この時期に見直しが行われます。この1年、給与も通勤手当も、何も増減がない方は変更がありません。目安として1万円くらい増減があると、変更の対象になる場合があります。

 

なぜ冒頭の記事は9月と言っているのか

実は、上記の2つの理由の保険料率、標準報酬月額の変更は9月に行われるからなんです。じゃあ9月に変更で合ってるじゃない! いえ、違うんです。これらが変更になったことによる、実際の厚生年金保険料の変更は「10月に受け取る給与」から変更になるんです。これは給与支給日(当月払い、翌月払い)の関係はありません。

なぜ10月給与から変更になるのか

社会保険料の支払いは「後払い」だと考えていただくとわかりやすいです。9月分の厚生年金保険料は後払いなので、実際は10月給与から控除されるので10月給与から変更となります。

 

なぜ社会保険料は後払いなのか?

実務ベースで考えてみましょう。

1.給与支給が「翌月払い」の場合、入社月に給与支給がないので控除できない。

例えば、末締め、翌月15日払いの会社の場合、9月入社の人の初回給与支給日は10月15日となります。9月分の社会保険料を9月に控除することとしていると、給与控除できないので困ってしまいます。

 

2.給与支給が「当月払い」の場合でも、給与計算時期にまだ標準報酬月額が決定していない可能性が高い。

社会保険料を計算する基となる「標準報酬月額」の決定は事業主ではなく保険者(年金機構や健保組合)になります。当月25日払いの場合、だいたい中旬くらいまでには給与計算を開始しているかと思います。その頃に決定通知書、届いてるかな〜ギリかな〜と、当月控除するのは実務的に難しい。となります。

なので、当月払いの会社の入社月の社会保険料の控除はなし。となります。

3.会社が保険者(年金機構・健保組合)に従業員分を含めた保険料を納めるのは翌月末。

従業員から先(当月)に控除すると「預り金」になってしまうし、納付も翌月末なので、当月に控除する必要がありません。

 

こういった実務的な理由もあって、ほとんどの会社が後払い(翌月控除)をしています。

ちなみに私は社会保険料を当月控除している会社を聞いたことがありませんが、入社月の社会保険料の控除が次のようになっていたら、「当月控除」の会社です。

  • 給与支給が当月払い:入社月の初回給与から社会保険料が控除されている。
  • 給与支給が翌月払い:初回給与から社会保険料が2ヶ月分控除されている。

 

 

給与計算で気をつけなければいけない月は?

10月支払い給与をいつ計算するのか。ということがポイントです。給与支給日が15日なら、だいたい10月に入ってから給与計算しますよね? そうすると、10月の給与計算で給与ソフトの保険料率を変更したり、新しい標準報酬月額を取り込んだりする必要があります。

3日支給なら、9月下旬に給与計算が必要でしょう。そうすると9月の給与計算で変更処理が必要です。

 

まとめ

  • 厚生年金保険料が変更になるのは、給与支給が当月払い、翌月払いに関係なく「10月に支払われる給与」から変更になります。
  • 給与計算担当者は「10月に支払う給与」の計算に注意しましょう。

(社保料を当月控除している会社除く)